『シナノユキマス』は、サケ・マスに近いコレゴヌス属に分類される冷水性の魚で、元々日本にいた魚ではありません。
長野県には1975年に旧チェコスロバキアから卵が導入され、以来10年にわたる長野県水産試験場の試験研究の結果、世界に先駆けて養殖技術の確立に成功しました。
1983年より民間事業ベースによる本格的な生産が始まり、この魚の雪を連想させる銀白色の姿ならびに長野県の特産魚にふさわしい愛称として『シナノユキマス』と名付けられました。
コレゴヌス・ペリヤジ・ラバレー・ラバレット・白マス等
バイカル湖オームリ(C.autumnalis)・グレイリング(カワヒメマス)も同属の魚です。
頭部から背部にかけては青みを帯びた灰色で、体側から腹部は全体に銀白色であり、その特徴よりwhitefishという英名をもつ。体はやや側扁し、口は小さく、あごには歯がないが、舌にはかすかに突起状の歯が認められ、背鰭と尾鰭の間に小さな脂鰭が存在する。
産卵期の親魚は雌雄ともに、側線から腹部にかけての鱗が隆起し、金白色に変わる、特に雄はさわるとざらついた状態になる。
白身の魚であり、特有の香気をもつ、特に天然物ではその特徴が顕著である。ヨーロッパや北米では重要な食材として利用されてます。(ちなみにグレイリングの学名は、Thymallus thymallasです。)
シナノユキマスは、湖沼性の魚で、22℃~23℃以下の低水温を好む。日中は深層を遊泳し、夜間に表層へ浮上することが多い。
主な餌はミジンコなどのプランクトン動物であり、成長すると底生動物や小魚をとることがある、10℃以下の水温でもよく摂餌する。
満3年で全長約40cmに成長し、秋から冬に湖岸近くの小石の間に産卵する。卵の大きさは約2mm、体重1kgの親魚で2~4万粒、孵化した仔魚の全長は約10mmである、産卵適水温は3~6℃であり、孵化適水温は低く6℃以下です。
天然では湖沼等の面積の広い止水域に棲息する、濁り等に敏感で影響を受けやすいものの、寒冷地の水温変化の大きな湖沼等の極端に餌の少ない水域でも棲息できる。
Coregonus属の天然の分布は、東部ヨーロッパ、シベリア、北アメリカ等の北緯50度近辺及びそれ以北の地帯であり、現在は移植により北部ヨーロッパ諸国に広く分布し、各国とも人工孵化放流による増殖事業を行っている。日本では長野県の立岩湖、松原湖、柳久保池、中綱湖、白樺湖の5ヶ所に放流されている、本亜種以外に同属ではC.mukusun・C.Thymallus thymallas等が日本へ移入され、現在飼育されています。
日本への移植
コレゴヌスが日本に最初に移植導入されたのは、文献によると1926年にアメリカの5大湖産のホワイトフィッシュ(C.clupeaformis)の卵を200万粒移入し、琵琶湖に放流したのが最初とされています。
他にも当時北海道、秋田等いくつかの県が、5大湖産やロシア産の卵を導入しましたが定着させることはできませんでした。
その後青森県が、バイカル湖産のオームリ(C.autumnalis migratorius)を、1969年来10年に渡り導入しましたが成功しませんでした。そのほか1978年からは、旧ソ連邦からペレッド(C. peled)、ムクスン、ラドガ等の発眼卵を水産庁を通し、青森県や三重県などに配布され試験が行われました。
長野県には、1975年より長野県水産試験場佐久支場に、旧チェコスロバキアからマレーナ(C. lavaretus maraena)とペレッド(C. peled)の発眼卵が導入され、これらを孵化育成し、1978年より自家採卵による再生産に成功し、1983年より民間養魚場への稚魚配布が開始され本格的な養殖が開始されました。
その全国各地の水産試験場等にその稚魚および発眼卵が、養殖技術と共に送られ、現在では北海道のキタノユキマス、福島県の会津ユキマス、愛媛県のヒメノユキマスと呼ばれています。
また山形県、秋田県でも養殖されていますがまだ本格的に商業ベースで生産されているのは長野県だけです。
Coregonusは一部を除いて本来積極的な釣りの対象魚ではなく、味の良さおよび習性等により、漁の対象とされております。
長野県では、立岩湖、加和志湖、松原湖、柳久保池、中綱湖、白樺湖等に放流され、その釣りにくさから多くの釣り人を魅了しています。
特に冬期間の穴釣りは、対象魚の大きさにおいて今までになかった感覚を与えてくれ、いちどその面白さを味わうと病みつきになるようです。